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パソコン甲子園モバイル部門の結果について思うこと

はじめに

パソコン甲子園が終わった。

 

結果はプログラミング部門が5位となり、悲願の受賞を果たした。沖縄高専パソコン甲子園プログラミング部門に挑戦を始めてから8年目の快挙であった。

一方、モバイル部門は昨年のグランプリを受けて連覇を狙った満を持しての出場だったが無冠であった。何の賞も取れなかった。

 

今回のモバイル部門の惨敗の責任は全て顧問である私にある。

 

テーマ発表から企画書作り、そのあと夏休みの全てを費やしての開発。本選2週間前からのポスター作成、配布パンフレット作成、プレゼンのスライド作成・発表練習を行ったICT委員会の3名と1ヶ月以上かけて、すばらしいプロモーションアニメを作ってくれたデジタルアート部のメンバーに大変申し訳ない気持ちでいっぱいである。

本選に向けて必死に頑張ってきた努力が無駄になった。いや、無駄になったという言い方はしたくない。この経験は必ずこのあと活かされるとものなので、決して無駄ではなかったが、努力が成果に結びつけることができなかった。頑張ってくれた学生たちに本当に申し訳ないと思っている。

グランプリ受賞に向けて必要以上のことを求め過ぎてしまった。完全に私の采配ミスであった。

 

モバイル部門で今回私がどんな判断ミスをしたのか、自分自身を分析するために今回の記事はモバイル部門について書くことにする。プログラミング部門の健闘について改めてブログで書く。

 

戦略のミス

 

パソコン甲子園HPには以下のように審査基準が公開されている。

 

本選の審査基準

各チームの作品、プレゼンテーション及びデモンストレーション・セッションの内容を、以下の4つの観点から審査します。そのうえで、審査員は“夢のある”アプリを企画・開発する総合的なプロデュース力があるかどうかに重点を置いて協議し、入賞チームを決定します。なお、来場者から最も優れていると思う作品を選んで投票してもらい、その結果は審査において考慮します。 

 

1.技術力:選手の開発スキル、実装された機能の完成度、動作の安定性等

2.デザイン:ビジュアル的な見栄え、表現技法、使い勝手等

3.イノベーション:ユーザーが体験できる楽しさ、ビジネス性、独創性、発展可能性等

4.プレゼン力:プレゼンテーション及びデモンストレーション・セッションの出来栄え・チームワーク等

 

  

私はこの審査基準全てにおいて完璧なクオリティを追求させた。技術力ではアプリの完成度を高め、アプリのアイコンはデザイン性の高いものを作らせた。イノベーションはアイデアの優劣を判断する基準だと考え、ビジネス性や発展可能性を含めたアイデアを検討させた。プレゼン力ではスライド作りから発表練習を含め、かなり高いレベルのプレゼンをさせた。

また、公式HPにはデジタルコンテンツ部門がなくなった理由について次のように理由づけられている。

 

※今年度からデジタルコンテンツ部門をモバイル部門に統合いたします。モバイル部門の本選では、デザイン力や芸術性が高い作品には“ベストデザイン賞”、オリジナリティがあり、ビジネス的にも発展可能性のあるような作品には、“ベストアイディア賞”を授与します。デジタルコンテンツ部門で見ることができた創造性や表現力の豊かな作品が、モバイル部門で応募されることに期待します。 

 

このことから、デジタルコンテンツ部門が単に廃止されるのではなく、モバイル部門に統合され、昨年までのデジタルコンテンツ部門の受け皿になっていると解釈した。そこで、沖縄高専でデジタルコンテンツ部門で活躍していたチームに声をかけ、今回のアプリのデザイン、プレゼンで使用するアニメーションの作成を依頼した。デジタルコンテンツ部門でこれまで頑張っていたメンバーは部門の廃止により目標を失い、活動自体も低迷していたため、活動目標を与えようという意図もあった。

 

審査委員が求めていること

 

今回のパソコン甲子園モバイル部門を通じて審査委員が何を求めているのかがわかった気がする。審査委員は「高校生の目線からのおもしろいアイデア」を求めているに過ぎないということである。アプリの完成度、デモでの訴求力、プレゼンのわかりやすさはそれほど比重が高くないと言っていい。最も重要視すると考えられるテーマとの整合性についても「おもしろいアイデア」であれば多少は目をつむってもらえるようだ。

 

これまで沖縄高専はデジタルコンテンツ部門に参加してきた。その中でグランプリ3回準グランプリ2回受賞してきた。そのコンテンツ部門の審査結果では「テーマとの整合性」がかなり重視されている印象を受けた。作品の出来がかなりよくても、テーマと整合しない作品は受賞を逃したり、グランプリにならず準グランプリになっていたりしていた。私は過去のコンテンツ部門をずっと見てきて、モバイル部門においてもテーマとの整合性が強く求められると信じていた。

 

また、完成度の高さも重要であると考えていた。高専には高専プロコンという全国の高専がプログラミング技術を競う大会がある。高専プロコンではテーマとの整合性だけではなく「システムとしての完成度」が強く要求される。どんなおもしろいアイデアであっても、システムの完成度が低く、実用性や有用性が示せなかったら評価されない。私は高専プロコンをパソコン甲子園に持ち込んでしまった。大きな勘違いであった。パソコン甲子園が求めている完成度とは、実際に実用レベルまで動作するものではなく、考えたアイデアを審査委員に示すことができるレベルのものでよかった。

 

プレゼンも高校生らしく不器用ではあるが一生懸命やってるし頑張ったねというレベルでよいようである。プレゼン資料の作成に何日もかけ、何度も何度も練習するレベルは求められていない。

 

デモブースの展示においても、展示内容は企画書をちょっと書き直して展示すればよいのである。今回の受賞チームをみるとグランプリを受賞した鳥羽商船高専高専プロコンで求められるレベルのポスターを用意していたが、他の学校の展示を見るとそれほど時間をかけているとは思えない。作成にかけた時間は数時間であろう。ポスターの内容を吟味し、表現方法にこだわり、使用するフォント探しに何時間もかける必要はなかったのである。

 

GooglePlayに公開してアプリの完成度を高める→必要なかった

サーバーを契約して実際にサービスを実現した→必要なかった

インターナショナルに対応するためアプリを多国語対応した→必要なかった

ポスター作成に膨大な時間を費やした→必要なかった

プレゼンのスライド作りに何日も徹夜する→必要なかった

プレゼンにコンセプトをわかりやすくするためのアニメーションの作成→必要なかった

 

これら全てを私はチームに求めてしまった。必要なのは審査委員が講評で言っていた「自分事のアイデア」のみであった。

 

来年に向けて

 

沖縄高専はこのままでは終われない。惜しくも連覇は逃したが来年復活する。今年の結果は残念であったが収穫もあった。アイデア出しに時間をかければよいのである。今回は完成度の高い開発をするために開発リソースの集中したが、アイデア段階とそれを実現する最低限の開発とデモ準備でよいのであれば、もっと手軽に応募できる。

 

1年生は無理としても2年生が中心となって、複数のチームを作り多数の応募を行い。アイデアの優劣は予選において審査委員に選んでもらった上で、戦略的に効果的な開発をすればいい。今年はしなかった高専プロコンとのチームの重複も可能かもしれない。

 

この記事を読むかもしれないモバイル部門に関わった全てのメンバーに伝えたい。今回は君たちに高すぎるものを求めて大変申し訳なかった。しかし、苦労したことは必ず報われるということを信じて欲しい。今年のモバイル部門の取り組みの中で苦労し悩みそれでも立ち向かったという経験を通して大きく成長したはずである。特にこの半年間のリーダの成長はめざましいものがあった。彼女の今後の人生にとってかけがえのないものを得たことは間違いない。これからもチャレンジを続けることを強く希望する。

 

以上、私が今感じていることを書いてきたが、パソコン甲子園の審査委員、実行委員、運営に携わったスタッフには毎年、我々にチャレンジと成長の場を与えて頂き大変感謝している。モバイル部門は正式種目となってまだ2回目であり、審査の基準や方法にも手探り状態であることは想像に難くない。しかし、参加者側から若干のわがままを言わせてもらえるなら、毎年コロコロ審査基準を変えないで欲しいというのが希望である。そうでなければ何を目指して取り組んでよいのかわからなくなり、参加するモチベーションが保てなくなってしまう。これは決して今年のことを言っているのではなく、来年以降についての私の個人的な希望である。

 

パソコン甲子園が今後益々、全国の高校生・高専生が目指し、日本のICT教育の発展に寄与できる大会であることを願っています。

 

最後にふたたび。沖縄高専は来年必ずリベンジします。沖縄高専でこの夏、おそらく他校の何倍も努力し頑張った学生のためにも。